ワイルドで行こう
.リトルバード・アクセス《3b》
翌朝、いつも通りの食卓――だけど、どんよりとした空気感。
弟たちも耐えられないのか、いつもより食べるスピードが速い。この場から一分でも早く去ろうとしているのがわかる。
親父さんは眉間にしわを寄せたまま、食卓で朝食を食べている小鳥の正面で新聞を読んでいる。琴子母は眼鏡をかけた朝のスタイルで、もう出勤しなくちゃとエプロンを解いてリビングを出て行った。
「ごっそうさん」
いつもは母の顔を見ていう父が、この日は母が出て行ってから誰に向かう訳でもなくぼっそりと呟いただけ。新聞をたたむと父までリビングを出て行った。
「すげえ険悪。朝一番に父ちゃんが母ちゃんに抱きつかないってさあ、異常事態だろ。父ちゃん、昨夜は走って帰ってくるの遅かったしなあ」
聖児も父が帰ってくる気配を自室で感じ取っていたよう。
「すぐ仲直りするよ。いつもじゃん」
玲児は今までの両親の姿を信じて疑っていない。でも居心地悪そうだった。
それは小鳥も同じなのだが。あの母が『実母のところで寝ます』なんて一晩でもこの婿宅を出て行ったのは初めてだったから。
こういうことって。意地を張って幾晩も続くとこじれるような……。そこが心配。ましてや自分が原因だなんて。心が痛くて仕様がない。