ワイルドで行こう



 親父さんと違って、学歴があって落ち着きがあって、冷静。頭脳明晰なところは、元天才(?)とか言われている武ちゃん専務とがっちり話も渡り合えて『なんとも使い勝手万能の男』と専務もお気に入り。近頃は、お客さんからもタキタの秘蔵っ子と言われている。

どこに行くにも社長が連れていくほど、親父さんも翔のことは信頼して、なくてはならない補佐になってきてる。

 こいうい男はきっと。どこで仕事をしても『できる人』なんだろうなと、小鳥は感じている。

 本当なら、大手企業のエリートだったかもしれない人――。

「はあ、なんか急に遠くにかんじた」

 元ヤンが親父の、やんちゃ娘なんて。十歳も年下の勤め先の上司の娘なんて。翔兄は大人、立場も節度もわきまえている。

 それだけならともかく。大学を卒業して龍星轟に来た時、翔兄には彼女がいた。

 それはいまも続いているみたいだった。だけどそのプライベートすら職場だから必要以上に匂わせない。そういう徹底している人だった。それに翔兄も実直で誠実だから、ひとりの女性をまっすぐに愛してきているんだろうな――。

 まだ子供の小鳥なんて。どんなに頭を撫でてもらえても、気にかけてもらえても『妹程度』に違いない。

「うまく髪が結えなかった日って、良いことあっても、プラマイゼロなんだよねー」

 また、ため息が出た。これ以上良いことなんて、あるの?



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