ワイルドで行こう



 小鳥のクラブは『自動車愛好クラブ』。小鳥が立ち上げたものだった。

 これが結構、男子女子問わずにそれなりに部員が集まったので、週に一度、車の話を好きなだけする会になっている。そこで好きな車の画像を見るため視聴覚教室を使わせてもらっている。

 花梨ちゃんは興味はないけど、小鳥と一緒ということで部員になってくれた。竜太はこれまた花梨ちゃんが無理矢理に部員にさせたものだった。

「あ、いいよ。私、もう行くから。デジカメのファイルを持ってきただけだし」

 それなりの理由をつけて、二人きりにさせてあげようと思った。
 だけどそこで花梨ちゃんがいきなり言い放った。

「いいの、小鳥ちゃん。私、竜太と別れるってもう決めたの。なんといわれても決めたの」

 はあ? 別れる!? 

 小鳥はびっくりして、むくれている花梨ちゃんと不機嫌そうな竜太を交互に見た。

「小鳥ちゃんが、あんなに楽しみにしていた免許取得を延期にしたんだもん。私だってケジメつける!」
「わ、ちょっと待って、花梨ちゃん。だからって大好きな竜太と別れることないじゃん!」

 わけわかんない!? あんなに竜太が好き好き言っていたのに、ケジメで別れるってなに? 彼氏なんていたことがない小鳥には理解不能!

 でもそこで、やっと……花梨ちゃんが泣き顔に崩れた。

「だって。竜太……本当は私のことなんか好きじゃないもん」
「だから、そうじゃねえっていってんだろ。わりい、滝田。花梨と二人きりにしてくれ」
「う、うん。わかった」

 竜太は別れる気がないようなので、小鳥もひとまずほっとし二人きりにした。

 でも。その後も二人はぎくしゃくしていてそのまま放課後に――。それでも二人で下校する姿も見たので、その日は小鳥もそっとしておくことにした。





 
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