ワイルドで行こう
「つくづく思う。お前って本当に親父さんに似たんだな」
コンビニでサンドウィッチやおにぎりにサラダなどを買い込んで戻ってきた小鳥に、雅彦おじさんはまずそう言った。
それでも小鳥に『サンキュ』と御礼の合掌をしてから、雅彦おじさんは食べ始めてくれる。
「即決の男、滝田社長にそっくりだ。思い立ったら飛び出している、決めている、そして迷いはなし。ただし、周りがちょっと見えていない時がある」
「それ、もう聞き飽きた」
本多のおじさんは、子供だからとか気遣わずにはっきりいう大人。その分、子供には良くも悪くもストレートに伝わる。
たらこのおにぎりをぱくぱく頬張るおじさん。一度、口にしたら止まらないようで、小鳥が買いそろえてきたものを全部食べてしまった。
気持ちと身体が分離しているように小鳥には見える。身体は水分も欲しているし、空腹なのに。気持ちが勝ってしまい、飲まず食わずで時間も忘れて……。本当に紙と鉛筆だけで生きていきたい人なんだ思う。
お腹がいっぱいになって落ち着いたのかやっとおじさんが笑顔になる。
「でも、ありがとうな」
小鳥もほっとして『うん』と微笑み返した。
「ちょっと周りが見えていなくても、そのロケットパワーで周りを引っ張って、最後はみんなの為になっている。それが滝田族ってところだな」
おじさんは、父のことも良く口にする。
『お前の親父さんは、男の中の男だよ。あの人を嫌いになりたい人なんていないんじゃないか』と、別れた元恋人の母よりもずっとずっと長く親しく付き合ってきた朋友のように、『もう少ししたら車を見てもらいに龍星轟に行くと、親父さんに伝えておいてくれ。会えるのを楽しみにしているとね』とか言って嬉しそうな顔になる。
なんでもずっと前、小鳥が生まれる前に、親父さんが雅彦おじさんのデザインを気に入ってくれて仕事を依頼してから、おじさんの人生は大きく変わったのだとか。
「でも。気が利くところは、琴子に似たんだな。俺が好きなサンドに握り飯ばかりだった」
はあ、腹一杯になった――とお腹をさすり満足そうなおじさん。なのに、また紙に向かって鉛筆を手にしてしまう。せっかくデスクから離れたのだから、一息ついたらいいのに。と、小鳥は密かに呆れる。