ワイルドで行こう
「ありがとう。おじさん」
いつも以上に心を込めて礼をいうと、そこでやっと普段は見せない優しい笑みをおじさんが見せてくれる。
そして小鳥はそのステッカーの原案をまじまじと眺める。
龍星轟ステッカーの最低条件は『龍』と『星』。これは親父さんがあの店を始める時に決めたトレードマーク。レディスステッカーには、ワイルドベリー。これは琴子母を象徴しているらしい。
そしてその龍とワイルドベリーが描かれている横に、やっぱり『小鳥』が描かれていて、小鳥はため息をついた。
「私をイメージするって、やっぱり小鳥になっちゃうんだね」
マウスを握ったまま、小鳥の反応をうかがっていた雅彦おじさんが、そこで妙に不敵な微笑みをみせた。
「そうか。これは気に入らないか。じゃあ、これはどうだ」
マウスがカチッと音をたてて次に出てきた画像に、小鳥は目を見張った。
そこには、自分がお願いしようとしたイメージ通りのものが出来上がっていた!
「か、かわいい! これ……天使?」
雅彦おじさんが『そうだ』と頷く。
「小鳥なんてありきたりだ。でも、もしかすると……『やっぱり私は小鳥だから』といいだすかもしれないと思って、候補にはしておいた」
「もう一つの候補は、なんで天使にしたの?」
おじさんは少し躊躇していたが。
「背中に羽根があって小鳥みたいだろ。それに……。お前は滝田夫妻のところに初めて飛んできた天使、そういうイメージ」
「私が、天使……? ちょっと恥ずかしいな」
「龍星轟の娘として走るのだから、わかりやすくインパクトが強くないとダメだ。しかも男ばかりの世界に足を突っ込もうとしているんだから、これぐらいの『護身』があってもいいだろう」
『護身』? 天使が守護神ってこと? あまりにも壮大になってきたので、今度は戸惑いが生じる。