ワイルドで行こう
.リトルバード・アクセス《6a》
だけど雅彦おじさんは、そこまで話が済むと、腕を組んでステッカーの原案画像を眺めたまま黙り込んでしまう。
「おじさん……?」
「子供って、あっという間にでかくなるんだなあと思って。龍星轟のステッカーは、俺にとっては原点。親父さんにも伝えているけど、いつか子供達が車に乗るようになったらその子供達のステッカーを描かせてくれと。その日が、本当に来たんだなあ……。来年は小鳥が、二年後には聖児が、いずれ玲児も、車に乗る。もうすぐ。つい最近まで、そこらへんちょこまかしていたチビスケ達だったのに。……俺は結婚はしなかったから今更子供を望んだりはしないけど。まあ……滝田三姉弟を身近に過ごせたこと。滝田夫妻に感謝しているよ」
だから、と、おじさんが小鳥を見た。
「だから。またおいで」
小鳥も『うん!』と笑顔で応える。
そこには『おじさん』以上の何かをいつも感じさせてくれる暖かさがある。まるで親戚のよう。それは今に始まったことではない。しかも、本当なら琴子母とは二度と顔を合わせたくない仲だったかもしれないのに……。雅彦おじさんは、小鳥だけじゃなく聖児にも玲児とも、ずっと親しくしてくれ、そして成長を見守ってきてくれた大人のひとり。だからこその『滝田夫妻には感謝している』なのかなと漠然としながらも小鳥はそう感じた。
たぶん。琴子母以上に、英児父の気持ちがそうさせているのだろう。そうでなければ、この気難しそうなおじさんがこんなに気をよくして付き合ってくれない気がする。
「そうだ。小鳥が実はガーリーだ、ということで、前からずううっと気にかけていたことがあったんだ」
「え、なになに」
待っていろよ。と、おじさんが向かっていたスケッチブックに、鉛筆でまたたくまにデザイン画を仕上げていく。
それはほんとうに素早い。プロの手さばき、そして紡ぎ出される絵も何も見ていないのに、おじさんの頭の中に沢山の写真や雑誌がインプットされているかのようにスラスラと描き出される。
そこには、ファッション画。様々な服装をした細長い女性のスタイル画が何通りにも並べられた。