ワイルドで行こう
「これが、いいたいこと?」
「そう。これは、お前が絶対に着ちゃいけないスタイル集」
「え、なにそれ!」
「これから制服じゃなくて私服になるだろ。心配していたんだ。絶対、こんな服を選びそうで、失敗しそうで」
着てはいけないファッション集を見て、小鳥は驚愕。
「わ、わたし。こんな服ばっかり持ってるっ」
ポロシャツにデニムパンツ、チェックのシャツ、ティシャツ。シンプルでボーイッシュなワードローブばかり。
「いくらボーイッシュでも、これを続けるなよ」
しかもそれだけじゃない。ボーイッシュな服装のファッション画以外は、フリルや花柄、ふわふわしたフェミニンスタイルが次に並んでいる。
それにも驚愕。何故なら、女らしくするなら『こんな服を買えばいいよね』と思っていたものばかり!
だけどそのお嬢様スタイル画を眺めているうちに、小鳥は気がついた。そして雅彦おじさんがそれを口にする。
「琴子のフリフリ服は絶対に着るな、真似するな。お前、身体のスタイルとか趣味とかは母親の影響を受けているけど、ムードは母親とは正反対。やっぱり滝田社長と同じで顔つきがクールだから」
母親とは正反対のタイプ。だから母親の服を着ると大失敗すると言いたいらしい。じゃあ、どうすれば――。そこもおじさんは紙をめくって、新しい紙に描き出してくれる。
「たぶん。私服になってもボーイッシュにしているだろうけど、どこかひとつ『大人の女の要素』をいれるだけで違うから。それから週に一度は完全な大人の女スタイルをするようにしておきな」
次はまったく新しい雰囲気のスタイル画が出来上がっていく。シンプルだけど、シャープでクール。シャツ襟のノースリーブのブラウスにタイトスカート。肩が出ているレイヤードのトップスにスリムなクロップドパンツ。いわゆるクールで大人ぽいスタイル。
そして小鳥は『あ』と驚く。おじさんがスラスラ書いたスタイル画の中に、翔からもらったような黒いシャツ襟ワンピースとそっくりなものがあった。それにキャスケット帽子をかぶせたスタイル画。