ワイルドで行こう
.リトルバード・アクセス《6b》
母も昔からお洒落だった。本多のおじさんと並ぶとお似合いだったのでは。
もう夏も目の前。白いブラウスの胸元には紺色白色ストライプのスカーフ、生成の麻スカートには赤い細ベルト。初夏を意識したマリンルック風の母。
その母の後をついて事務所の駐車場にある、銀色のフェアレディZまで。母の運転で途中のスーパーで一緒に買い物をして龍星轟まで帰宅する。
母のフェアレディZが店先に現れると、男達の『オカミさん、おかえりなさい』、『おつかれさま』という声が飛び交う。
ガレージには何台もの車。その中を母は片手でハンドルを操作しながら器用にバックして、狭い場所にいとも簡単に駐車してしまう。
父の運転も惚れ惚れだが、見かけが大人しそうな奥様な琴子母でもハンドルさばきはなかなかのもので、小鳥はそんな母のように早くなりたくてうずうずしてしまう。
「おう、おかえり。琴子」
龍星轟ジャケット姿の親父さんがガレージに姿を現す。
「ただいま。英児さん」
母の姿を見ただけで嬉しそうな父は、薄汚れている作業着姿でも白い歯を見せ爽やかに微笑む。こういう時、小鳥は父から『男』を感じる。
琴子母を見る時のその顔が、いつまでも彼女を愛おしむ彼氏のようで……。そして母も……。『英児さん』と呼ぶことが多い。
「ん? 小鳥も一緒だったのか」