ワイルドで行こう
「本多君のところに来ていたの。ステッカーの話をしていたみたいよ」
母には帰り道に『おじさんがステッカーを作ってくれる準備をしてくれていた』と報告してある。
すると親父さんも驚いた顔をしたかと思うと、感慨深そうに表情を崩した。
「本多君。覚えていてくれたのか」
親父さんも、雅彦おじさんとのいつかの会話を思い出しているようだった。
「おじさん。何も言わなくても、私が望むデザインをもう考えて用意してくれていたんだよ」
「マジで……。どんなもんだった、それ」
うんと可愛いクールなガーリー、そして天使……だと思ったら、普段の自分とは違うのでちょっと小鳥は恥ずかしくなってきた。
「出来上がるまで内緒。まだ原案だから」
「なんだよ。気になるな」
親父さんが黒髪をかきながらむくれた。だけど、すぐにポケットから携帯電話を取り出して親父さんは呟く。
「俺からも礼を言っておくわ。そろそろ夏限定のステッカーのデザインも決めたいし」
即行動の親父さんは電話をかけると、そのままガレージを出て行ってしまった。
『ああ、本多君。今日はうちの娘が……。いやいや、いつもありがとう。ステッカーの話を聞いたんだけど。……うん、そうなんだ。あっという間だよな、ほんと、ガキがでかくなるのは……』
オヤジ同士の、良くある会話。でも親父さんも声を立てて笑って楽しそうだった。電話の向こう、雅彦おじさんはどんな顔で話しているのだろう。