ワイルドで行こう



「店で聞かなかったのかよ」
「仕事中だもん」
「兄ちゃんがどこへ行こうが関係ねえじゃん」

 妙につっけんどんな弟の返答に、小鳥はむっとした。

「もういいよ。早く、行っておいでよ」

 なのに弟はまだ睨むような目で姉の小鳥を見ている。でも小鳥には、父にそっくりなそのガンつけ目線が、密かに何かを悲しんでいるから怒っているようにも見えた。

「聖児?」
「まあ、いずれ。姉ちゃんも聞いちゃうだろうしな」

 ふうっと溜め息を落とした聖児の肩から、なにかを諦めたように力が抜けていく。


「翔兄。彼女にプロポーズをしに行ったんだよ」


 え……。

 言ったつもりで、声になっていなかった。
 そして聖児も、姉を反応を黙って見ている。




※リトルバード・アクセス《7c》へ続きます※



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