ワイルドで行こう
まままま、待って? 竜太だけじゃなくって、なにそれ。ヤダ、もう、頭パンクする! うちのクラスの男子、おかしい! なんで男勝りな私なの!?
でも誰が申し込んでくれても、小鳥の返答は決まっている。
それを言おうとしたら、竜太から言いだした。
「きっとお前の気持ちって。花梨に聞いた時から変わっていないと思うから。それとなく土居にも告げていいかな」
彼の横顔が凍ったのを小鳥は見た。自分のことのように口惜しそうに歯を食いしばっているような、そんな力んだ表情。
そしてそれは友人の土居君同様、竜太も同じ気持ちでいるのだと――。
だからって。小鳥は申し訳なくは思わない。そして彼等に、きちんと今こそ告げるべきだと毅然とする。
「そうして。私、ずっと同じ人を好きだし……。これからもきっとその人が好き」
「そっか。それでも納得しなかったら、あいつ、当たって砕けに行くと思うから、頼むな」
「わかった。ハンパなことしない。はっきり言うよ。私の今の気持ちを……心苦しくても。そして気にかけてくれて有り難うって言う」
「うん、安心した。じゃあ、それだけ」
すっと、潔く――。竜太が背を向ける。
ネクタイを緩めている夏シャツの後ろ姿。彼の茶色の毛先が耳元をくすぐる、そんな夏風が吹いてくる。
そのまま、行ってしまうと思ったのに。竜太は途中でまた立ち止まった。
「そいつ。お前のことどう思ってんの」
竜太にもきちんと言うべきなのだろう……と、小鳥は口を開く。
「まだ子供だと思ってる」
「望み、あるのかよ」