ワイルドで行こう



 いまの話は本当の話。小鳥のことを気にして声をかけてくれる男子大学生は数人いたけれど、根っから『走り屋親分の娘』と小鳥の運転で『体感』すると、綺麗で可愛くて付き合いやすい女の子を欲している彼等には『ただの女友達』へとあっという間に降格してくれる。

 だけど、小鳥もそれは自ら狙ってのこと。
 だって。必要ない。好きな人はずっと前から一人だから。

 そして父も、『娘は走りで近づく男を蹴落としている』と聞いて、やっと満足そうに安堵したようだ。

「なんだ。そんなヤワ男とのドライブならいいわ。だけれど、まだまだ若いんだからよ。調子ぶっこいて飛ばすなよ。事故るなよ」
「わかっているよ」
「スミレちゃんはお前が守れ」
「そのつもりだよ。妹みたいなもんだもん」

 あれから、スミレとはずっと親しくしてきた。彼女も今年、小鳥と同じ大学に入学。サークルも直ぐに入ってくれた。

 そして花梨ちゃんとは、あの後直ぐに仲直り。一ヶ月ももたなかった。夏休みになる前に、花梨ちゃんから『小鳥ちゃん、同じ大学を希望しているから、塾の夏期講習を一緒に申し込んで一緒に頑張ろう』と声をかけてくれた。元に戻ると以前以上に信頼関係も強くなった。花梨ちゃんも女性として強くなってしまい。

 そんな親友の花梨ちゃんとスミレは、いつも一緒。大人しいスミレにとって『小鳥がしっかり者兄貴で花梨が怖い姉貴』と、男子達は笑い話にしているくらい。

 それ以外にもスミレを守る使命感が。スミレを気にしている弟の聖児が、余計な心配をしないためでもあった……。

 年下の聖児は、まだ高校生。手が届かないところにいるスミレ先輩を『姉ちゃんが守れ』と、父親とそっくり同じ事を出かけるたびに小鳥に言ってくる。今朝も、姉の顔を見るやいなや開口一番『スミレから離れるなよ』だった……。

 そんな弟とスミレは、一線を越えたのか越えていないのかは定かではないが『いちばん傍にいる異性』という間柄が続いているようだった。いつの間にそうなったのかは、わからない。





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