ワイルドで行こう
インターチェンジが視界に現れ、二人揃ってスピードを落とす。
先頭を行くのは白いスープラ。俺が先導するとばかりに、彼が先に走ってしまう。
高速を降りて一般道に出ても、先ゆく彼は小鳥が思い描いたとおりのルートを走り始めている。彼が選んだそのコース、行く先はもうひとつだけだった。
何も言わなくても、小鳥が行こうとしている場所をわかってくれている。……これはもう『一人の決意』ではなく、『今夜は当たって砕けろ』に変更決定のよう。小鳥の中に、何とも言えない緊張が少しずつ心臓にじわじわと迫ってくる感覚。
夜の瀬戸内海がひっそり優しく光る国道をまた一緒に走る。青と白のトヨタ車二台は、ついに岬へ向かう峠道に。
小さな街灯しかない狭い峠道を、走り屋仕様の車がエンジンのうなりを潜め、静かにのぼっていく。そして二人の車は、大きな灯台が照らす灯りの中へ共に辿り着いた。
なにもない真夜中の駐車場に、たった二台の車。白いスープラの運転席から、彼が降りてきた。小鳥もシートベルトを外しドアを開けると、側に来てくれた翔兄がもうそこに立っていた。
「今夜はずいぶん遠いところを目指していたんだな」
やっぱり。不機嫌そうな声。
「うん。そんな気分だったから」
「夜、ここに来るということは夜中の到着になり、帰りは朝方になる――ということをわかっていて……」
『何が悪いか、子供じゃないから判っているよな』なんていう、そういう彼の諭すような上からの目線が時々小鳥を苛立たせる。だから、さらに小言を言われる前に自分から遮る。
「お母さんには、今夜は『岬に行って帰ってくる』とちゃんと伝えている」
すると、翔兄が少し驚いた顔を見せた。
「オカミさんが……? 許してくれたのか」
「くれたけど。それがなにか?」
ちょっと素直じゃない切り返しをしてしまう。そして彼が驚いたのも無理はないかと思う。小鳥には今まで『門限』があった。だけどハタチを過ぎたら門限は解除ということになっている。ただし何に置いても自己責任ときつく言われている。
それでも時々、遅くなることはあった。きっちり守っていたが、バイトを始めた頃から、両親も徐々に目くじらを立てなくなってきた。それも小鳥がきちんと遅くなる時は連絡を入れているからかもしれない。
今日も事前報告の上、ここに来ることに決めていた。