ワイルドで行こう
涙が出てしまった。あまりにも感極まって……。
それだけで翔兄の唇は離れた。涙を流している小鳥を見て、やっぱり少し狼狽えている。
「大丈夫か。厭だったか」
そんなことない。ただ、待ちすぎて、感触よりも気持ちが大騒ぎしているだけ。だから涙がでちゃっているだけ。でも言葉にもならない。
初めてのキスだなんて。言わなくてもきっと翔兄も察してくれている。だから、触れるだけの優しいキスでやめてくれたのだと。そして初めてのキスが望むものだったかどうか気にしてくれている。
今度は自分から彼に応えるため、小鳥から翔の首に抱きついた。
「こ、小鳥……」
「好き、お兄ちゃん、大好き」
その唇を彼に押しつけた。やっぱり彼の困惑した戸惑う身体の堅さ。ずっと前から変わらない。小鳥のことを、どうしてもすぐにはその腕に受け入れてくれないという堅さが……。
お兄ちゃんこそ、私が女になってぶつかったら困っているじゃない? お兄ちゃんの方が困っているじゃない? 私のことは、やっぱり『子供の頃から知っている子』? それとも――。そう心で呟きながら、小鳥は翔の唇に何度もキスを繰り返す。
だけどその度に、彼に抱き寄せられていることに気がついた。身体が堅いのは変わらないけど、彼の長い腕の中、深く強く抱き寄せられている。頬を何度も撫でられて、いつの間にか、小鳥の熱烈なキスと同じように彼もあちこちにキスを返してくれている。
小鳥、小鳥……。掠れた声で何度も呼ぶ翔の息が熱い。それが小鳥の頬に鼻先に、首元に、耳元になんども落ちてくる。
小鳥も、翔の背にしがみつくように強く抱きついていた。止まないキスは、やがて彼の誘いで絡まるキスに変わっていく。小鳥の柔らかい唇を優しくこじあけた彼の舌先が、ゆっくりなめらかに奥深くまで侵入し愛撫する。
初めてなのに、こんな濃密なキスになるなんて……。
でも小鳥もわかっていた。もう子供じゃない。大人のキスがどんなものか知っている。彼が躊躇わずに思うままに愛してくれることに、また涙が滲んだ。
「翔にい……」
私の息も溶けてきている。小鳥は自分でもそう思った。身体も熱くなっている。息が……恥ずかしいほど乱れている。こんなに熱く愛されることが、こんなに甘やかに灼けついてとろけるようだなんて……。