ワイルドで行こう
今日の琴子先輩は、ふわふわの真っ白なニットワンピース。紗英が一緒に見立てたものだった。
琴子先輩は『ちょっと可愛すぎない?』と躊躇っていたが、『こういうお洋服はこの日だけって勢いで買うんですよ!』とか『絶対に白!』とか『滝田社長、こういう愛らしいのが好きそうー』等々、押しに押して勧めた。
庭付きのレストランが本日の会場。『ホームパーティにご招待』というようなハウスウェディングをイメージして選んだ会場だった。
ビュッフェランチスタイルにして、堅苦しい進行はなし。とにかく到着した人たちに『ウェルカムドリンク』を手渡したら、既に会場入りしてくれている新郎新婦の滝田夫妻と談笑してもらうというスタイルにした。
「おめでとう、タキ」
「今日は来てくれてありがとうな」
やってきた招待客を夫妻で迎える滝田夫妻と、滝田社長の友人。
「式は内輪だけっていうからさ。いつ奥さんを紹介してもらえるかと思ったけどよ」
「ああ、えっと。女房になった琴子」
滝田社長のちょっと照れた紹介に、琴子先輩がそこでいつもの優しいにっこり。
「初めまして、琴子です。本日は来てくださって有り難うございます」
品のあるきちんとしたお辞儀が琴子先輩らしい――と紗英はいつも思う。特に裕福すぎる家柄でもなく、父親が地位がある人だったというわけでもない。だけれど、お父様とお母様が丁寧にきちんとお育てになった――という意味で『いいところのお嬢さん』であると思う。
その彼女の雰囲気は、滝田社長もとても気に入っているようで、そしてもうメロメロに弱いらしい。それはいま目の前にいる滝田社長の友人も同じくのようで、丁寧な琴子先輩の挨拶に、かえって恐縮しているようだった。
「なんだよ。タキにはもったいねえやっ」
「だろ。もったいないだろ。でもわりいな。もうどうあっても俺の女房だから!」
バシバシとお互いをどつきあって、大らかに笑い飛ばしている男同士の雰囲気からも、既に『元ヤン』のムードを感じた紗英。