ワイルドで行こう
席もない進行もない、決まり切ったことなどなにもないレストランのハウスパーティーは、なにもしなくても賑やか。滝田社長の友人達が勝手に盛り上げてくれる。
『堅っ苦しい進行とかプログラムとかいらないから。どーせぐちゃぐちゃになるんだよ。それなら最初からない方が良い』と武智さんが提案したのだが、紗英もよーくわかった。自分たちが行きたい方向へ行っちゃう人たち、しかも何故か同じ方へ揃って行けてしまう人たちなのだと。
だけれど武智さんと『これだけは』と用意していたイベントをいくつか。
宴もたけなわ、元ヤン兄貴達に混じっていた武智さんがマイク片手に輪から離れると、紗英を探しているのがわかった。そろそろかと紗英も先輩と同級生から離れ、司会者席まで向かう。
「じゃあ、紗英さんにお願いしようかな」
武智さんにマイクを渡され、紗英も頷く。堅苦しい進行もなし、紗英はいきなり告げる。
「皆様、こんにちは。楽しくご歓談のところでしょうが、ここで『ご友人代表』からお祝いの言葉を滝田夫妻に届けて頂けたらと思います」