ワイルドで行こう
「獲ったーー!」
もうふざけることにも全力の兄貴達。誰が獲得しても関係なし。獲った男性の周りに集まって、そのリングを皆で回して匂いを嗅いでいるその……ある意味、なんと、品のないというか。紗英も苦笑い。勿論、滝田社長は『野郎共にお裾分けすべきもの』とわかっていても、わなわなと震えていた。でも、しっかりと琴子さんの肩を抱き寄せて片時も離さないその姿は、誰から見ても確かなもの。
それを眺めているうちに、紗英の隣にいた絵里香先輩が笑っていった。
「とっても愛されているみたいね、琴子。うん、安心した。本当に心から」
琴子先輩の窮地を見過ごしてしまって後悔していたのは紗英もそうだけれど、とても悔やんでいたのはこの先輩。でももう絵里香先輩も笑っている。先ほどのような涙はもう……。
元ヤン兄貴軍団のお陰で、本当に賑やかなハウスパーティーに。
最後は、新郎新婦からの希望で『一人一人、お見送りしたい』とのこと。庭に出るテラスでお見送り。夫妻が用意したちょっとしたリボンがついた包み。それを二人揃って手渡して『ありがとう』と見送っている。
「タキさん、琴子さん。おめでとう」
「シノ、ありがとうな」
「お二人が結婚すると知った時、やっぱりと思ったんすよ。庭の手入れを一緒にした時からいい感じだったもんなー、兄貴と琴子さん。良かったすね、タキさん」
「篠原さん、有り難うございました。また実家の庭をよろしくお願いしますね」
そうして会場が徐々に静まりかえっていく――。
やっと風の音が聞こえた頃、レストランには幹事を引き受けた紗英と武智さんと、滝田夫妻だけに。
―◆・◆・◆・◆・◆―