ワイルドで行こう
琴子もシャワーで疲れを流し、眠る準備。一日の全てが終わり、彼とくつろぐベッドルームへ。
部屋にはいると、開いている窓から小雨が見えた。
初夏になったせいか、英児はもう下着一枚、ほとんど素肌でタオルケットにくるまり、今夜は車の雑誌片手にもう眠っていた。
琴子も隣に入るとすうすうと安らかな寝息が聞こえて、そっと微笑む。
さらさらと優しい雨の音。彼の耳元にそっと触れ、琴子はそこに『おやすみ、お疲れ様』と小さなキスを落とした。
キャミソールにショートパンツ姿の琴子もタオルケットを引き寄せ、夫の隣でひと息、眠りにつく。横になった途端だった。
「やっと来た」
丸出しの肩に熱い人肌。驚くと、もう英児が覆い被さっていた。
「起きていたの」
「してくれただろ、いま」
そのお返しとばかりに、英児の熱い唇が琴子の耳に触れる。
「琴子、お前も……お疲れ」
小さなキスと囁きをしっかり気付かれていて、琴子はちょっと恥ずかしくなる。
「起こしちゃって……」
ごめんね。そう言おうとした唇を、英児はゆっくりでも強くふさいでしまう。
こじ開ける舌先も、強いのに、ゆっくり。急いでいない。
でも。彼がキスをしたら、もう琴子が着ているものをめくっていて、柔らかい乳房を探す手は相変わらず素早い。
彼と舌先で愛しあう時にはもう、英児の熱い手が琴子の乳房を掴んでいる。優しく揉んでいる。その手はいつも『探して、確かめている』と感じさせ、男特有の欲求を込めただけの手ではないことを、琴子はもうよく知っていた。
だけれど。なによりも先に、女の肌を、熱を、柔らかさを、匂いを、その手を触覚のようにして探して求めてくれるこの英児の手が琴子は好きだった。
最初は、なんて悪ガキと思っていたのに。こんなに『私を探して、見つけて、捕まえてくれる』と思うと、その手に柔らかな乳房が捕まった時、琴子はもうなにもかも彼に捧げたくなってしまう。
それでも、英児の手は『渇望』を滾らせていたような荒っぽさはやわらいでいた。探すのは素早いが、捕まえたら……いま交わしている口づけと一緒。熱くゆっくり慌てずに、ひとつひとつを確かめるよう感じ合うよう丁寧に。
琴子も静かに上から被さってくる夫の大きな身体を迎え入れるよう、背に手を回して抱きしめる。
そうすると『お前がひっついてきたから、挨拶はもう終わり!』とばかりに、英児の手が琴子が身につけているものを手早く剥いでしまう。上のキャミソールも、下のショーツも。その素早さも変わらず……いや、素早いというか、ここはちょっと手荒かも? 琴子が『あん、そんな格好させないで』と恥じらったその時にはもう、キャミソールもショーツも宙に舞うと言ってもいいくらいにベッドの外に放り投げられている。