ワイルドで行こう
そうすると、英児が琴子が開いた足の間で満足そうに微笑む。ゆっくりと入っていった彼の指先が、今度は奥でくんっと突き立てられ、琴子はそこでやっと……男に責められて泣く女になる。
「え、英児……」
たっぷり濡れているから、彼の指先が琴子の中でどうにでも泳ぎまくる。そして、琴子がどんなふうにして欲しいかも、夫の英児は熟知していた。
手加減をしてほしいところも、激しく攻めてほしいところも。それどころかいちばん欲しいところに当たりそうで当たらないようじらして、琴子に何かを言わせるかのように意地悪く弄ぶことも近ごろは……。
「あっ、あ、あんっ、エイジ、エイジ……」
妻から開いた足だから、英児は遠慮無く割り開いてそこに居座っている。しかも片足を自分の男の肩に乗せて、さらに大きく開いて堂々と厳つい男の手先を忍ばせる。
熱い息を弾ませる妻をシーツに寝かせたまま、妻の足を担いで女の足の間で居座っている男が勝ち誇った笑みで、見下ろしている。
絶え間なく下から襲ってくる狂おしい波に、はあはあと悶えている琴子と目が合う。
彼が最近それを好んでやることにも、琴子は気がついていた。もう涙が滲みそうな琴子の瞳をみつめている英児。そして彼の黒い眼が琴子の熱く火照った頬とか、喘いでいる鼻先とか、我慢できずに声を漏らしてしまう濡れたままの唇とか……。それを俺の指先がそうさせているのだと、確かめているのだってわかっていた。その視線は唇で止まらない。吐息でふるふるんと弾むまるい乳房も、感じすぎてつんと尖ったままの紅い胸先も、緩く波打つ白い下腹も――。もう濡れて煌めく黒毛も。そこに何度も沈めていく太くて長い、男の自分の指も。そこまで眺めて英児は……。
英児の太い指が、まだ彼とひとつに繋がっていないのに、琴子を極みまで高めようとしている。中を侵す長い指だけじゃない、男の短く太い指先も琴子の茂みの奥に潜んでいる『イチゴ』を揉んでいた。
「イチゴ、今日もうまそうだな」
あ、あんっ。灼けつくような甘い痛みが琴子の茂みの奥から駆け上がってくる。
「い、いちごって……、いわない……で」
ツヤツヤ光る俺のイチゴ。結婚していつからか、彼が急にそう喩えるようになった。
結婚して暫く……の頃。
最初はどうしてかわからないけれど『イチゴ、イチゴ』と言っては口に含んで、本当にイチゴを味わうように熱く愛撫するようになった夫。そんな時、琴子もとてつもなくエロチックな気分にさせられ、そのまま流されていた。
でもある日。妹同然の後輩、紗英が『結婚祝いに』と届けてくれた幸運を呼ぶワイルドベリーを、琴子が大事に大事に世話をしていくつも実がなるようになった頃。霧吹きの滴できらきら煌めいて甘い香りがする可愛い苺の実を、いまの幸せを噛みしめるように見つめていたら、その時、このおおらかな夫がこう言いだした。
『このイチゴってさ。琴子の匂いなんだよな』
急に何を言い出したのかと、琴子はきょとんと首を傾げる。だけど夫の英児は、そんなワイルドベリーを愛おしそうに見つめている。