ワイルドで行こう
だけど英児も照れくさそうにして、隠してしまう。
「いいんだよ。ただ……。こんなにされるほど、俺……乱暴だったのかと思って。お前、途中からぐったりして。いつもより無反応だったから」
それを『俺、また自分のやりたいようにやって、琴子を無視した』と気にしている。だけど、そうじゃない。そして英児はやっぱり気がついていない。
でも、これ以上。この人をこんな顔にさせたくなくて……。
琴子はそっと、英児の背に額をくっつけて小さく囁いた。
「……たの、私」
「は、なに?」
英児がもどかしそうに肩越しから振り向くのだが、琴子の恥じ入る声はまだ聞こえないらしい。だから、琴子は今度ははっきり言う。
「貴方とひとつになった時に、」
いっちゃった……の。
そこは少しだけ小さく言った。だけど英児がものすごく驚いて、琴子を正面に顔を覗き込んできた。
「え、マジで。え、これ……、俺が痛えって言ったあの時かよ」
琴子の頬は熱く、でもこっくりと頷く。すると英児がまだ染みるそのひっかき傷を手で押さえ、茫然とした顔。その目が遠く馳せていて、その時を思い返しているのだと琴子にも判った。
「うっそだろ。だってお前、その直ぐ前に一度……なったよな?」
「そうなんだけど。なんかしらないけど、昨夜……は、つづけてきちゃって。私もびっくりしちゃったし、でも英児さんは夢中で一生懸命だったから、もうすごくって意識が飛びそうで。だからつい……ひっかいちゃったみたいで」
「っていうか、琴子、お前……最近、」
めちゃくちゃ感度良くねえ? と言いたそうな英児。もう琴子は朝から恥ずかしくて、ついに英児から背を向けてしまう。
「知らない。でも……きっと英児さんのせいよ。だって。」
ツヤツヤ濡れているイチゴとか、くたくたにしてやるとか。そうして琴子の身体を熱くとろけさせることにまっしぐら。なんの躊躇いもなく、野性的に大胆に琴子の身体を開いてしまった男。
「もう英児さんじゃないと、きっとダメ」
別れることなんてないとは思うけど。もし彼がいなくなってしまったら、もうどの男も物足りないに決まっていると本気でそう思っている。
「琴子!」
背中から、彼がこれまた力いっぱい抱きついてきたので、琴子は突き飛ばされ転んでしまうかのようによろけたが、そこも逞しい英児の腕ががっしりと妻の身体を抱きとめ支えている。
「よーし、今夜は俺と同時に~」
「そんな。あわせるなんてムリよ」
「やってみねえとわからないだろ」
えー。この夫が言うと本気で向かってきそう。逆にそこまで身体が持つのか心配になってしまう。
しかも今日も後ろから抱きしめる英児は、いつまでも離してくれない。もう遅刻しそうでハラハラしても、琴子も幸せに浸ってしまう。