ワイルドで行こう
無事に出勤、到着。英児が三好堂印刷まで、スカイラインで送り届けてくれる。
「じゃあな。いつものカフェで待ち合わせな。俺も遅くなるようだったら連絡するから待ってろよ」
「うん。ゼットに乗ってきてね」
念を押したのに、英児はにぱっと笑うだけ……。『おう、乗ってくるわ』といつものハキハキとした返事をしてくれないまま、龍星轟に帰ってしまった。
ちょっと琴子に小さなひっかかり。
また雨がサラサラと降ってくる。いつまでもじめじめした鬱陶しい季節。
「これじゃあ。ピカピカのゼットでおでかけは無理ね」
自分が生まれた季節を少し呪う。
それでも今日は久しぶりに……。あのロケット兄貴が『今夜限りの素敵なところ』へとまた連れ出してくれるかと思うと、夜が待ち遠しくてたまらなかった。
銀色のゼットがロケットになって、琴子が見たこともない夜の光へ、恋へ連れて行ってくれたのだって。この季節だった。
今夜、彼のロケットはどこに連れて行ってくれるのだろう。