ワイルドで行こう
「あー、いいよなあ。俺なんか嫁さんに、車のもん欲しいと言ったら夕飯抜きにされたのによお。一緒に車を飾ってくれるだなんていい嫁さんだよなあ。なあ、英児」
「そ、そりゃ。そうだけれどよ……」
「なあ、琴子も一生懸命働いているからできるんだよな。フェアレディZをまるまるプレゼントしてくれた太っ腹の旦那にお返ししたかったんだよな」
そういうことか――と、英児も思い至り、琴子へと振り返る。
「そうなのか。琴子」
やりすぎたのかと琴子はうつむいたまま。
「琴子」
英児に呼ばれ、琴子がやっと顔を上げる。
「私また、へんに頑張りすぎたのかな……」
その通りだった。ほんと、この子は頑張りすぎてその度にびっくりさせられる。だから、英児もようやっと彼女らしいという嬉しさが湧き上がってきた。
「たっくよう、またガツンって来たじゃねえかよ。俺の嫁さん、強烈すぎるわ」
やっと笑って、OL姿の奥さんを英児は嬉しさいっぱいに抱きしめる。
「ありがとな、琴子。スカイラインをかっこよくしてくれてありがとな」
龍星轟のジャケットの胸元に、英児が大好きなOL姿の彼女を抱きしめる。琴子もやっとほっとした微笑みを浮かべてくれている。