ワイルドで行こう
「あのな、来年は普通でいいからな。俺だってよう、年に一度はチョコを食べたいんだよ」
そう来年。来年は女子的チョコをもらえるように祈っていよう。今年は斜め上にぶっとんだものがガツンと来たけれど、それもまたいい思い出になるだろう。
すると琴子がカーディガンのポケットからなにかを取りだした。
「あの、とってつけたようで……出しづらくなっちゃったんだけれど……。チョコは食べないと思っていたから。でも、そんなに甘くないのを選んだつもり」
琴子の手に、ハート形の銀缶がちょこんと乗っている。缶の横には青い石のチャームがキラキラ揺れている。
「これ、俺の、チョコなのか」
「うん。……あの、私の趣味みたいでまたごめんね。でもね、ここのチョコレート話題でおいしいの。チョコは英児さんでも食べられそうなビターなの」
うわあ、これだよ。これ! これこそ俺が憧れていた『いかにも女子チョコ』!
「琴子! ありがとうな! 俺、こういうのめちゃくちゃ憧れていたんだよ!」
小さなハート銀缶が乗っている琴子の手を、英児はぎゅっと握りしめた。
英児があんまり喜んでいるので、今度は琴子がきょとんとしている。