ワイルドで行こう

◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆


 はあ、暑いなあ。やっぱりこの時期にキッチンの火の前に立つのはつらい。
 土曜日の午後、琴子は従業員のお昼ご飯を作っているところ。
 矢野専務のご要望で、今日は天ぷら蕎麦。天ぷらを揚げる暑さと蕎麦を茹でる暑さに見まわれていた。
 おう! 琴子、おめえの昼飯、やっぱ元気出るわ。うまかったーーーー!
 ものすごく喜んでくれるので、それを見てしまうと琴子も『また作ります』と嬉しくなってしまうから続けている。
 そんなランチタイムもなんとか無事に終了。最後にランチタイムにはいった英児からも『いつも有り難うな。助かるよ』と昼間なのに熱烈なキスをもらってしまった。
 従業員のランチタイムもシフトでひとまわり落ち着いた頃。琴子も冷たいコーヒーを入れて一休み。
 玄関のチャイムが鳴った。夫の英児なら自宅だから勝手に入ってくる。誰かしら――と、琴子はエプロン姿のままインターホンに出てみる。
『こんにちはー。愛子です』
 英児実家、長兄のお嫁さん。お義姉さんだった。

< 672 / 698 >

この作品をシェア

pagetop