ワイルドで行こう
「いらっしゃいませ。愛子お姉さん」
「あっついねー。突然、ごめんなさいね」
連絡もなしに来ることは珍しいことだった。
「下のピットで英ちゃんに声を掛けたんだけれど、手が離せないから二階で涼んでいて、琴子もいるよ――と言ってくれたんだけど。あがってもいいかな」
「大丈夫ですよ。暑かったでしょう。いま、私も冷たいコーヒーを飲んでいたんです。お姉さんにもいれますね。アイスティーもありますけれど」
「ほんとう? じゃあ、アイスティーもらおうかな。この前、琴子さんがご馳走してくれたのがおいしかったから」
長兄の嫁である愛子義姉は、琴子よりだいぶ年上だった。元より英児と長兄の善男は歳が離れているので、琴子とはさらに歳が離れてしまう。既に中学生と高校生のお母さん。もうベテランママさんだった。
でもこの義姉のおかげで、不仲である父親と英児を取り持ってくれてきた。長男の嫁としてのお務めも完璧で、いま滝田家を取り仕切っているのはこのお義姉さん。お舅さんの面倒見もベテランで、きっと滝田家でこのお義姉さんがいなくなるとみんながパニックになるのではないかと琴子は思っている。
もうひとり、次男のお嫁さんもいて、近所に住んでいるとかで長男の嫁、次男の嫁と協力し合っているようだった。その次男のお嫁さんとも琴子は歳が離れている。