ワイルドで行こう
「ごめんね、突然。お盆前で忙しいのもあるんだけれど、お父さんの目を盗んで来るのが大変だったのよ」
「なにかあったのですか」
けっこう癇癪持ちである気難しいお義父さんが、慣れているお嫁さんでも怒声を浴びせることは日常茶飯事。他愛もないことで怒り出すとかで、それで英児が嫌って家に寄りつかなくなったという経緯もあるほど。
「別にまだ怒られてはいないけれどね。お盆前は、お父さんと英ちゃんのご対面があるからピリピリするのよ。お盆前にこそこそ会っていたとかばれると、おまえはうちの嫁なんだから家のことだけして、外で迷惑をかけているヤツなんか気にすることない、でかけるな!! ってなるのよ~」
「……そ、そんなこといわれるのですか」
琴子は絶句した。結婚のご挨拶や結婚式ぐらいでしか会ったことがないため、英児の『クソ親父、気にいらねえ』なんて態度や同居しているお義姉さんからの話を聞くと、やっぱり怖いお舅さんと震え上がってしまう。
「口は悪いけどね。そこは英ちゃんと一緒よ。似てるんだってきっと」
「似てる……ですか?」
うまく重ならない? そんな話を聞きながら、琴子は義姉の愛子にアイスティーを出した。