ワイルドで行こう
空に少しだけ茜が残っている夏の夜。お店を閉めた英児が二階自宅に帰ってくる。
「今日も暑かったね。ご飯の前にシャワーでも浴びてくる?」
「おう、そうだな……って、おい、なんだこれ!?」
ダイニングテーブルに広げてみていた写真を、ついに本人が見つけてしまう。
「ななな、なんで、お、俺の、俺の、こんな写真がここに!」
つつみかくさず披露されてしまった学生時代のヤンキー姿の数々。その写真を自分で手にとって眺めている英児がぶるぶると震えている。
「愛子お義姉さんが持ってきてくれたの。この家にひきとってほしいって」
「姉ちゃんか! だからうちに来たのか!」
「うん。お盆のお掃除をしていたら出てきたんだって」
「まじかよ~。てか、俺に聞いてから持ってこいつーの。こんな……琴子に……」
そんなに嫌な姿なのかな? 琴子はちょっと首を傾げた。もちろん、琴子も高校生時代の垢抜けない自分を思うと気恥ずかしいばかりで、英児に見て欲しいとは思わない。でも……。
「そんなことないわよ。これ、この写真。すごく素敵なんだけれど」
この頃の俺が、素敵!?
ギョッとしている英児に、愛子がお気に入りの、そして琴子がふわっとときめいてしまった二枚の写真を差し出した。
金髪、短髪に、ガンとばしの作業服姿の英児。その後、兄と愛子の結婚式のためにきちんと黒髪に戻し、きりっと凛々しく黒いフォーマルスーツを着こなしている好青年な英児。