ワイルドで行こう
「それなら、私だって同じよ。走り屋さんなんて遠い人だったから」
「でも、今は一緒にいるんだ」
まるで琴子の気持を確かめるみたいに彼がクスクス笑う。今夜は余裕のお兄さんでいられるらしい。
あまり琴子を困らすのは止めてくれたのか、彼が姿勢を崩し、椅子を横座り。足を大きく組んで煙草を口にくわえた。そういうスタイルの作り方が、やっぱりまだ元ヤンの名残ぽい。長く彼に染みついている仕草のようだった。
銀色のジッポーライターでカチリと火をつけて煙をひと吹き。琴子を避けて吐いてくれたが、その煙の匂いはこちらにやってくる。
食事の手を止め、琴子は暫くその煙の匂いに思わず囚われる。
「あ、わりい。煙草、ダメだったか。だよな。その綺麗なブラウスに匂いがついてしまうな」
はっとした彼が慌てて灰皿へと手を伸ばした。琴子が食事の手を止めてしまったのは何故かも直ぐに気がついてくれて。だが慌ててとめた。
「い、いいの。慣れているから。うちの社長も吸うし、かれも……」
『彼も吸っていた』。そう言いそうになって琴子は慌てて口を閉ざす。だが遅かった。
「もしかして。いま彼氏が……いる……とか」
殊の外、彼が青ざめてしまったので琴子もびっくりしてすかさず告げる。
「ち、ちがう。とっくに別れました。……半年前だけど……」
ホッとした顔になる彼。そして煙草も消さず、続けて吸ってくれる。
「……ほんっと俺って馬鹿だな。ほんと琴子さんに男がいないなんて決めつけていただなんて」
「あのまま彼と今もつき合っていたら、絶対に貴方とは出会うことなかったと思う」
「どうして?」
彼が真顔で聞き返し、琴子を見ている。知りたいという目。
琴子は小さく笑い、ある日のことを彼に教える。
「でも、今は一緒にいるんだ」
まるで琴子の気持を確かめるみたいに彼がクスクス笑う。今夜は余裕のお兄さんでいられるらしい。
あまり琴子を困らすのは止めてくれたのか、彼が姿勢を崩し、椅子を横座り。足を大きく組んで煙草を口にくわえた。そういうスタイルの作り方が、やっぱりまだ元ヤンの名残ぽい。長く彼に染みついている仕草のようだった。
銀色のジッポーライターでカチリと火をつけて煙をひと吹き。琴子を避けて吐いてくれたが、その煙の匂いはこちらにやってくる。
食事の手を止め、琴子は暫くその煙の匂いに思わず囚われる。
「あ、わりい。煙草、ダメだったか。だよな。その綺麗なブラウスに匂いがついてしまうな」
はっとした彼が慌てて灰皿へと手を伸ばした。琴子が食事の手を止めてしまったのは何故かも直ぐに気がついてくれて。だが慌ててとめた。
「い、いいの。慣れているから。うちの社長も吸うし、かれも……」
『彼も吸っていた』。そう言いそうになって琴子は慌てて口を閉ざす。だが遅かった。
「もしかして。いま彼氏が……いる……とか」
殊の外、彼が青ざめてしまったので琴子もびっくりしてすかさず告げる。
「ち、ちがう。とっくに別れました。……半年前だけど……」
ホッとした顔になる彼。そして煙草も消さず、続けて吸ってくれる。
「……ほんっと俺って馬鹿だな。ほんと琴子さんに男がいないなんて決めつけていただなんて」
「あのまま彼と今もつき合っていたら、絶対に貴方とは出会うことなかったと思う」
「どうして?」
彼が真顔で聞き返し、琴子を見ている。知りたいという目。
琴子は小さく笑い、ある日のことを彼に教える。