ワイルドで行こう
 英児の銀の車は長くは走らなかった。同じ漁村の片隅にある古ぼけた白いモーテルに迷わず入っていった。
 古くても開けた窓には、先ほどと同じ月と入り江と遠い街灯り。赤い小さな灯台の光がくるりと回っては、前置きもなく窓辺で抱き合い口づけ合う二人を照らす……そんな部屋。
 もう時計の針なんて気にならなかった。今が何時で今どこにいてなんて。ただ、今夜はこの人と一緒にいる。裸になる。琴子の止まらない気持のままに……。
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