ワイルドで行こう
「あの……。三好社長も、お父様の社長も、奥様の車も、見たことあると……彼が」
「あるよ。滝田モータースは確かな店だから一括整備してもらおうと、親父にも了解もらって俺が持ち込んだんだから」
ちょっと待って。状況が見えない。琴子は眠気も手伝って頭をぼうっとさせる靄が思考を鈍らせようとしているのをなんとか振り払おうと、首を振った。
だけれど。そんな琴子の動揺を、ジュニア社長には見抜かれてしまう。
「ふうん。滝田の社長、琴子には素性を説明していなかった訳か」
「あの、整備士だということだけ聞いているんですけど」
呆れたため息をこぼしたジュニア社長が煙草をくわえた。
「彼らしいな。生粋の車好きだからな。社長とかいう肩書きはオマケだと思っているんだろう。それに琴子みたいな『女の子』じゃあ、滝田モータースの知名度なんてあっても興味なし無関係だろうしな」
知名度? なんか急にすごい話になっているようで、琴子の胸がドキドキ緊張してきた。
「そんなにすごいお店なんですか」
社長が誇らしげにニヤリと琴子を見た。
「女がブランドのバッグを崇拝するようにな、男にもあるんだよ、男のブランドってヤツが。車を格好良くしたいなら『タキタに持っていけ』が車好きな男達の合い言葉っていえば、無関心な女の子にも分かり易いかねえ」
そこで、ジュニア社長が先ほどから探っていた色校正の試し刷りの用紙を琴子へと差し出した。
そこには見覚えある赤と黒を基調にしたロゴマーク。
「琴子も何度か目にしたことあるはずだ。俺の車のトランクに貼っているだろ。滝田君の昨夜のゼットにも貼ってあるはずだし。それに、毎月うちで受注回してもらっている中古車雑誌にもこのトレードマークひとつの広告を毎月だしているだろ。校正チェックの時、琴子も何度か目にしているはずだ」
そんな、何百ページもチェックするのに、いちいち広告なんて記憶していない。でも、琴子はそのロゴマークを見てやっと思い出していた。
「これ。あの人がいつも着ている作業着のジャケットの袖に縫いつけてあったワッペンの……」
雄々しい龍に星、レーサースーツなどに貼り付けてあるようなと思ったあのワッペンのロゴだった。
「あるよ。滝田モータースは確かな店だから一括整備してもらおうと、親父にも了解もらって俺が持ち込んだんだから」
ちょっと待って。状況が見えない。琴子は眠気も手伝って頭をぼうっとさせる靄が思考を鈍らせようとしているのをなんとか振り払おうと、首を振った。
だけれど。そんな琴子の動揺を、ジュニア社長には見抜かれてしまう。
「ふうん。滝田の社長、琴子には素性を説明していなかった訳か」
「あの、整備士だということだけ聞いているんですけど」
呆れたため息をこぼしたジュニア社長が煙草をくわえた。
「彼らしいな。生粋の車好きだからな。社長とかいう肩書きはオマケだと思っているんだろう。それに琴子みたいな『女の子』じゃあ、滝田モータースの知名度なんてあっても興味なし無関係だろうしな」
知名度? なんか急にすごい話になっているようで、琴子の胸がドキドキ緊張してきた。
「そんなにすごいお店なんですか」
社長が誇らしげにニヤリと琴子を見た。
「女がブランドのバッグを崇拝するようにな、男にもあるんだよ、男のブランドってヤツが。車を格好良くしたいなら『タキタに持っていけ』が車好きな男達の合い言葉っていえば、無関心な女の子にも分かり易いかねえ」
そこで、ジュニア社長が先ほどから探っていた色校正の試し刷りの用紙を琴子へと差し出した。
そこには見覚えある赤と黒を基調にしたロゴマーク。
「琴子も何度か目にしたことあるはずだ。俺の車のトランクに貼っているだろ。滝田君の昨夜のゼットにも貼ってあるはずだし。それに、毎月うちで受注回してもらっている中古車雑誌にもこのトレードマークひとつの広告を毎月だしているだろ。校正チェックの時、琴子も何度か目にしているはずだ」
そんな、何百ページもチェックするのに、いちいち広告なんて記憶していない。でも、琴子はそのロゴマークを見てやっと思い出していた。
「これ。あの人がいつも着ている作業着のジャケットの袖に縫いつけてあったワッペンの……」
雄々しい龍に星、レーサースーツなどに貼り付けてあるようなと思ったあのワッペンのロゴだった。