本当の幸せ
『どこが、って…』
しばらく考えている私を
沙奈は次は穏やかに
ニコッと笑って見ていた
『私、慎司のことが
あったでしょ?』
『うん。』
『今じゃバカだったと
思うんだけど、
あの頃は本当に沙奈の
言葉も聞こうとしないで
慎司しか見てなかった。
慎司が暴力を
奮うのだって
自分が悪いんだって。
でも、直人がね
言ってくれたんだ
もっと周り見てみなって。
たったそれだけで
一気に目が覚めちゃって。
それに、私のことを
物じゃないって…
すごく嬉しかったの。』
『ふ~ん。
あたしの言葉は
聞けなかったのに
直人の言葉は
ちゃんと心に届いた
みたいだしね。』
沙奈がわざと泣き真似を
しながらそう言った。