会議室のナイショの関係
「そんなに慌てなくてもいいのに」


くすくすっと笑いながら、そう言うまーくん。

私は俯いていたから気付かなかったけど、近くで声がしたと思い顔を上げると、まーくんが私のすぐ側まで来ていた。

その距離に私の心臓はますます早くなる。


「ねぇ、君。“さぁちゃん”だよね?」


えっ?


思ってもいない言葉に私は、まーくんを見つめたまま固まる。

そんな私を見て笑うと


「和也の妹の紗和だろ?」


もう一度、まーくんは私に尋ねる。


「私の事……、覚えていたの?」


まさかの出来事に驚いた私は、目の前に居るのは社長なのに、つい、昔話していた時のような口調になってしまった。


「当たり前だろ?会社で初めて見た時、すぐに紗和だってわかったよ」


そう言うと、まーくんはそっと私の頬に触れる。

触れられた瞬間、さらに顔が赤くなるのがわかった。


私……

今もまーくんの事が好き?


それとも、男の人に触れられる事に慣れていない私。

だから、ドキドキしているの?


あまりにもドキドキしている私は、まーくんを見つめながら心の中で自問自答をしていた。


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