会議室のナイショの関係
「そんなに心配しなくても大丈夫よ」


そんな私を見て、お母さんはくすくすと笑っている。


「でも、お父さんに反対されなかったけどさ……。今日、ずっとお父さん機嫌悪そうだったから」


私は、お母さんが洗ってくれた食器を受け取り、それを拭く。


「あんな態度を取ってはいたけど、機嫌が悪いわけじゃないわよ」

「そうなの？」

「だって、真人くんが家に来る事、お父さんもすごく楽しみにしていたんだから」


お母さんは、ふふっと笑いながら、食器を洗う。


「そんな風には見えなかったけど……」


普段のお父さんは、いつもにこにこと笑顔で優しい。

そして、うるさいと思うくらい喋る。

そんなお父さんが、今日はずっと厳しい表情で無言だったから。


「まぁ、紗和が初めて私達にちゃんと紹介してくれた彼氏だからね」


そう言いながら、お母さんはやっぱり笑っている。


「今まで彼氏が出来ても、お母さんには話してくれていたけど、こんな風に紹介してくれなかったでしょ？いくら真人くんが和也の友達だとはいえ、今まで彼氏を家に連れて来なかった紗和が、私達のいる時に彼氏を連れて来るんだもん」

「それは、お母さんが“今日、まーくんを誘え”って言ったからでしょ」

「それはそうなんだけどさ。お父さん的には複雑なのよ。お母さんはただただ楽しみだったけどね！」


お母さんは、そう言いながら拭いた食器を片付ける。


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