会議室のナイショの関係
「そりゃ、一緒に過ごしたいけどね。でも、そんな事は言えないよ……」

「紗和……」


香澄は何とも言えない表情になる。


「でもさ、それ以前に、私の誕生日、知らないと思う」

「えっ!?」


私の言葉に、香澄は驚く。

そう、忙しくて会えない以前に、まーくんは私の誕生日を知らないと思う。


「だって、私、誕生日言ってないし」

「でも、紗和のお兄さんの友達なんでしょ?」

「うん。まーくんの誕生日は知っているけど、私の誕生日を言った記憶ないもん」



あれは、まーくんとお兄ちゃんがまだ高校生の時――…


夏休み前の終業式の日。

まーくんとお兄ちゃんは大荷物で帰って来る。

それは、毎年の事だった。

だけど、冬休みや春休み前はそんな事ない。

夏休み前の終業式の日だけ、荷物がやたら多かった。

あの頃の私は、ずっとそれが不思議だった。

まーくんとお兄ちゃんが高3で、私が小6の時だったと思う。

一度、私は聞いたんだ。


「何で、夏休み前だけ、そんなにいっぱい荷物があるの?」


って。


苦笑いしているまーくんの代わりに


「あぁ、これ、真人への誕生日プレゼント」


お兄ちゃんが教えてくれた。


まーくんの誕生日は7月28日。

高校生の時もモテていたまーくん。

誕生日が夏休みの間だから、みんな終業式の日に渡していたらしい――…



私は、その時に知ったんだよな。

まーくんの誕生日を。


「でも、社長なら知っているんじゃない?大丈夫だって」


香澄は元気付けるように、明るく言ってくれた。


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