会議室のナイショの関係
「さぁ、どうなんだろうね。それは、新入社員がどこの配属になるかで変わるんじゃない?でも、紗和、同棲……」


私はまた香澄の口を塞ぐ。


「だから、ここ会社!」


今の会話の中で名前を出していたわけじゃないけどさ。

いつ誰が聞いているかわからない。

注意したにこした事はない。


「ごめんって」


香澄は謝りながらも、やっぱり笑っている。


「でも、毎日会えるんだし」

「それも、いつになるかわからないからね……」


そんな会話をしながら、お茶を乗せたお盆を持ち会議室へ向かう。


コンコン――


「失礼します」


私と香澄は会議室に入り、お茶を出して行く。

香澄に“まーくんの事が好き”と伝えた日から、毎回、私がまーくんにお茶を出している。

きっと香澄は気を利かせてくれているのだろう。


「どうぞ」

「ありがとう」


お茶をまーくんの前に置くと、まーくんは顔を上げ笑顔を見せる。

だけど、その表情には疲れが見える。


まーくん、忙しいもんね。

やっぱり、私の誕生日の事なんて言えないよ。


お茶を出し終え、私と香澄は会議室を出た。


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