会議室のナイショの関係
それから、数時間後――…

私達がそれぞれ仕事をしていると『会議が終わった』と連絡が入る。

私と香澄は、後片付けをしに会議室へ行く。


その途中。

廊下を歩いていると


「あっ、紗和ちゃん」


前から歩いて来た一人の男の人に声を掛けられる。


確か、製造部の……


「中西さん、お疲れ様です」


中西さんとは、何度か会議で一緒になった事がある。

それから、廊下で会ったりすると気さくに声を掛けてくれる。


「ねぇ、紗和ちゃん。今日、誕生日でしょ?」

「えっ?あっ、はい」


何で中西さんが私の誕生日を知っているのか疑問に残るが、それには触れずに返事をする。


「誕生日、おめでとう」


中西さんは、にこにこと笑顔で私を見る。


「ありがとうございます」


私も笑顔で返す。


「でさ……。紗和ちゃん、今日、仕事終わった後って、ヒマ?」

「えっ?」

「誕生日のお祝いに、食事でもどうかなって」


中西さんはじっと私を見つめる。


「えっ、いや、あの……。今日はちょっと……」


まーくんと会えるわけでもないし、予定があるわけでもない。

だから、寂しい気持ちになるけど。

せっかく誘ってくれた中西さんには申し訳ないけど、私が誘って欲しいのは、まーくんだけ。

誕生日を一緒に過ごしたいのは、まーくんだけなんだ。

まーくんと過ごせないからって、他の男の人と過ごすなんて、考えられない。


「そっか。そりゃ、予定あるよな。じゃぁ、また今度、ご飯食べに行こうね」


そう言って、中西さんは歩いて行く。


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