給湯室の恋の罠
吸っているタバコも短くなっていく。


はぁ……

さっさと仕事終わらせて帰ろう。


タバコの火を消していると


「お疲れ様です」


その時、ちょうど倉木さんが喫煙ルームに入って来た。


「あっ、お疲れ様です」


会社のビルの中には、喫煙ルームはいくつもある。

だから、今までこんな風に会う事なんてなかった。

まさか、会えるなんて思っていなかった私は、すごく緊張してくる。


“倉木さんに会ったら、告白をする”

そう思っていた私。

そして、今、目の前には倉木さんがいる。


今がチャンス!


そう思うのだけど、なかなか言葉が出てこない。

いつも私は、好きだと思ったらすぐに気持ちを言う事が出来る。

だけど、倉木さんの事好きなのに、なんで言葉に出てこないの?


「どうしました?」

「えっ?」

「僕の顔に何か付いていますか?」


倉木さんはくすくす笑いながら私を見ていた。

私は無意識のうちに、倉木さんの事をじっと見ていたらしい。

倉木さんとこんな風に会う事なんてない。

だから、今がチャンスなのに。

なんで、私、言えないの?


「じゃぁ、僕はこれで」


タバコを吸い終えた倉木さんが喫煙ルームから出ようとする。


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