給湯室の恋の罠
あの日以来、福本さんの事が気になって、自然と見ていた。

“福本さんは仕事が出来る人”

その認識は、入社して企画課に配属になった頃からあったけど。

ミスをしてしまった紗和のフォローをさりげなくしていたり、困っている人がいれば、さっと手助けをしたり。

紗和の言う通り“すごく優しい人”。

そんな印象を持った。


だけど、私に対しては違った。

優しい所なんて見せてくれた事がない。

それがすごく嫌だった。

そして、どこかで

“優しくされて、紗和はずるい”

そう羨ましく思っていた。


「……ヤキモチ?」


福本さんは、少し遠慮気味に聞く。


「違います!」


自分でもそう思うけど、認めたくない私は力強く否定する。

だって、福本さんの事、何とも思っていないんだから……


「ははっ……、そうだよね」


寂しそうに笑うと、私を抱きしめていた腕の力が弱くなる。


「座って」


そして、椅子に座るように促される。

私が椅子に座ると、福本さんはコーヒーを淹れてくれ、目の前のテーブルに置く。

福本さんは椅子に座らずに私の側に立ち


「まず……」


気まずそうに話し出した。


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