給湯室の恋の罠
「俺、香澄ちゃんに冷たくしているつもりはない。だけど、香澄ちゃんは倉木さんの事が好きって事を知って……。
俺、香澄ちゃんとあまり話した事なかったし、俺の事なんて何とも思っていないのはわかっていたけど……。

勝手に倉木さんにヤキモチを妬いて、ムカついていた。だから、無意識のうちに、冷たくなっていたのかも。ごめんな」


福本さんは、気まずそうに謝る。


「それと、あの日以来話し掛けなかったのは……。あの日、俺の勝手なヤキモチで香澄ちゃんの事、怒らせたから気まずくて……。どう接したらいいか、わからなかったんだ」


そうだったんだ……


その言葉に、私はホッとする。


「なぁ、本当に倉木さんと付き合うの?」


少しの沈黙の後、福本さんが口を開く。


えっ?


福本さんを見ると、すごく悲しげな顔をしていた。

“そんな顔をさせてしまった”

そう思うと、胸がきゅうっと締め付けられる。


「えっと……、付き合いませんよ?」


さっきは“放っておいて”そう思ったけど。

福本さんの本当の気持ちを聞いて、私はちゃんと答えた。

だって、

“倉木さんと付き合うって福本さんに誤解されたくない”

そう思っている私もいたから。


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