給湯室の恋の罠
「福本さんと一緒に過ごせるのなら、残業、代わらなかったもん。福本さんに誘ってもらえなくて、私、寂しかったから……」

「えっ?寂しかったの?」


私の言葉を遮り、福本さんは嬉しそうに言う。


あっ……

つい本音が出てしまった。


「いやぁ、そういうわけじゃ……」


私は慌てて、気持ちをごまかそうとする。


「違うんだ……」


福本さんは、荷物をデスクの上に置きながら、寂しそうな表情をする。


「ねぇ……」


そして、私の両腕を掴み


「まだ、倉木さんの事が好き?」


真剣な表情で私を見つめる。

そんな福本さんに、私の心臓はドキドキとすごく煩く動いている。


「えっ?倉木さん?」

「そう、倉木さん」


福本さんは私から目を逸らさない。

だけど、ドキドキしている私はパッと福本さんから視線を逸らし、


「倉木さんの事は、もう何とも……」

「じゃぁ、俺の事は?」


えっ?

言ってもいいの?

私は、福本さんが好きだって……


この間まで“倉木さん”って言っていたのに、調子がいい、なんて思わない?


< 24 / 28 >

この作品をシェア

pagetop