給湯室の恋の罠
私が黙っていると


「ごめん」


福本さんは掴んでいた私の両腕を離し、頭をポンポンッと撫でる。


えっ?


私はパッと顔を上げると


「倉木さんの事、何とも思わなくなったからって、俺の事好きになるとは限らないもんな……」


そう言いながら、福本さんは苦笑いをする。


「最近、二人でよく会ってくれるから、俺、調子に乗ってた。長期戦でいくとか言っておきながら、俺、焦っていた。ごめんね」


そして、鞄を持ち


「ケーキ食べてね」


そう言って、帰ろうとする。


いいの?

せっかく、少しの時間だけどクリスマスを一緒に過ごせるのに。


このままで、

本当に、いいの?


「……待って」


私は福本さんのコートを掴む。


「あっ、あの……」


今まで、好きだと思ったら、すぐに気持ちが言えた。

気持ちを伝える時は、やっぱりドキドキはするけど。

今、福本さんに気持ちを伝えようとしている私。

いつも以上に緊張している。


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