給湯室の恋の罠
そんな私に


「上手くいくと思っているの?」


福本さんは私をじっと見据えて言う。

その目はどこか冷たかった。


「思ってないですけど……」


その目に負けそうになったけど


「でも、もしかしてって事もあるかもしれないじゃないですかっ!!」


私は強気で言い返す。


「俺はないと思うけど」


だけど福本さんは、はっきりとそう言い切る。


紗和は福本さんの事“優しい”って言うけど、この人のどこが優しいのっ!!


私はムカつく気持ちを抑えながら


「だから、何でそう言い切れるんですか?」


福本さんをキッと睨む。


「香澄ちゃん、聞いた事ないの?」


そして、私から視線を逸らさないまま


「倉木さんって、どんなに可愛い人でも綺麗な人でも、片っ端から断っているって。だから、本命がいるんだろうな、って話」


福本さんはそう言うけど


「でも、それって噂でしょ?」


告白を断っている事は、入社した頃、女の先輩達から少し聞いた事がある。

だけど本命の話は……

福本さんの今の言い方じゃ、憶測でしかない。


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