給湯室の恋の罠

 私の好きな人

“気持ちを伝える”

そう決めたのはいいけど、倉木さんとの接点がない。

社内で見かける事はある。

その度に、私はいつもドキドキしていた。

“好き”と気持ちを伝えたいけど、仕事中だから声を掛けるなんて出来ない。

気が付けば、告白をすると決めてから、数日が過ぎていた。

そして、あれから福本さんとは挨拶以外、会話をしていない。

同じ企画課でも、福本さんは紗和と同じデザイン部。

私は企画課の第一事業部で主にイベントなどの企画を考えている。

同じ空間には居るけど仕事内容は違う。

だから、仕事の話をする事もほとんどない。

それに、元々、そんなにプライベートな話なんてしていなかったし、いつも通りと言えば、そうなんだけど……

だけど、気が付けば、福本さんの事を目で追っていたり、福本さんの事を気にしている私がいた。

あの日以来、福本さんは紗和や他の同僚とは楽しそうに話すのに、私が近くに居たとしても、私には話し掛けてこない。

その事が、私はすごく悲しかった。


っていうか、私、なんでこんな気持ちになっているのだろう。

初めて“好き”なんて言われたもんだから、気にしているだけ?

そうだよ。

きっと、それだけだよ。

私が好きなのは倉木さんなのだから。


< 9 / 28 >

この作品をシェア

pagetop