愛を餌に罪は育つ
言おうかどうか悩んだが、今の内に言っておこうと思い私は口を開いた。



「あの――私たちって今微妙な関係ってことでしょ?」

『そうだね』

「私は貴方の事が嫌いなわけじゃないけど、以前みたいに――愛してるわけじゃない。だから――その――――」

『分かってるよ。また恋人同士になるまで美咲の嫌がることはしない。抱きしめたりキスしたり勿論それ以上も。あっ、抱きしめるのは時と場合によるかも』

「今日既に抱きしめられてるからそれは気にしてない」



安心したように笑っていた朝陽が突然真剣な顔に変わり、私の目を真っ直ぐ見詰めてきた。



『一つお願いがあるんだ』

「お願い?」

『手は繋ぎたい』

「――手?プッあははは、いいよ。真剣な顔するから身構えちゃったじゃない」

『良かったぁ、断られたらどうしようかと思ったよ。今日初めて笑ってくれたね。やっぱり美咲の笑顔は最高だよ。美咲、大好きだよ』

「――ありがとう」



今の私にとって"ありがとう"という言葉が朝陽に返してあげられる精一杯の言葉だった。


朝陽は遠慮がちに私の手を握り締め、その手から優しさが伝わってくるようだった。


私はまた朝陽を好きになるんだろうか。


そうならいいなと思った。






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