愛を餌に罪は育つ
『これを読んで、どうしてこん時点で警察に相談せんかったんか――とは思わずにいられんかったです』

「――私が警察に相談した履歴とかは残っていないんですか」

『大野さんが警察に相談した履歴は一つも残っとらんです』



山田さんの言うとおり、私が警察にストーカー被害に遭っている事を相談していれば何か変わっていたかもしれない。


この時点で異常な手紙を貰っているのに、どうして私は警察に届けを出さなかったんだろう。



××年八月三日

写真に一緒に写っているのは同じ部署の香川さんだった。

念の為香川さんに最近変わったことはないかと確認したが、特に変わった事はないと言っていた。

その言葉を聞いて私は安心した。

香川さんと関わるのは必要最低限にしよう。

私のせいで変な事に巻き込んでしまったら申し訳ないから。



××年八月九日

香川さんが階段を下りている時に足を踏み外してしまい、誤って転落してしまったと今日職場の人から聞いた。

全治二週間で、見た目よりも怪我は軽いということで少し安心した。

今日も宛名のみが記入された封筒がポストの中に入っていて、その中には手紙が一枚入っていた。

“君に近付き過ぎたんだから当然の報いだ。これ以上僕を怒らせないで――いいね?君に触れる奴は誰だろうと許さない”

手紙を持つ手が震えた。

香川さんとは出来るだけ関わらないようにしてた、それなのに――。

だけど私は思い出してしまった。

会社を出たところで香川さんから呼び止められた際に一瞬肩を掴まれた事がある事に――。





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