愛を餌に罪は育つ
自分が書いたものなのに全く覚えていないし、読んでいても何一つ思い出さなかった。


だけど、読んでいるだけで恐怖のせいか手が微かに震えている。



『次の記録で最後です』

「――――」



山田さんの重たい口調に体は強張り、心臓は煩く騒ぎ始めた。


空気の薄い場所にいるわけではないのに息苦しい。



××年八月二十六日

香川さんが――亡くなった。

昨夜またれいの手紙が入っていた。

手紙にはこう綴られていた――。

“暫く会えなくなってしまうから、ゴミを処分しておくよ。僕がいない間もいい子にしてるんだよ”

この手紙を読んで私は直ぐに香川さんに電話したけど電話は繋がらなくて、職場の人に連絡して香川さんが住んでいる場所を聞いた。

だけど香川さんは家にはいなくて、他に当てもない私は不安な気持ちを抱えたまま家に帰った。

そして次の日――今日、香川さんが電車に跳ねられて亡くなったと――会社の朝礼で聞かされた――――。

警察に連絡しようと思ったけど、彼に知られてこれ以上被害者が増えたら――そう思うと、怖くて何もできなかった。

彼に直接会って話しができれば――私が直接お願いすれば――止めてくれるかもしれない。





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