愛を餌に罪は育つ
『香川さんの件ですがね、調べさせてもらいました。ホームからの転落は事故死で処理されとりました。その前の階段からの転落ですがね、これは駅の階段から転落したようです』

「駅の階段から――」

『この時は警察への届けはなかったんですが、病院にカルテが保管されとりました』



山田さんが当時の事を話してくれているのに、私の頭の中は別の事でいっぱいだった。


胃がキュッと縮まる感覚に襲われる度、冷や汗が滲み出ているようだ。



「大野さん、大丈夫ですか?」



笠原さんの声にハッとして、そういえば私は今警察署に居るんだと思った。



「すみ、ません――」

「また何か思い出したんですか?」

「いえ――一つ気になる事があって――――」



只の偶然かもしれない。


だけど、そうじゃなかったら――そう思うと口にする事が怖かった。



「大野さん?」

「――最近、同じ会社の男性が駅の階段から落ちて怪我をしたんです。誰かに――背中を押された様なきがするって――言って、ました」



私の言葉に山田さんと笠原さんの表情はいっそう険しい表情へと変わった。


その表情を見て私の恐怖は更に大きく膨れ上がり、もうこの問題から目を背けてしまいたかった。






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