愛を餌に罪は育つ
警察署を出て、今は一人夜道を歩いている。


笠原さんが送っていくと言ってくれたけど私は断った。


あんな物を見た後に一人で夜道を歩くのは正直怖い。


だけど一人になる時間が欲しかったし、朝陽と会うための心の準備がしたかった。


コートのポケットの中には防犯ブザーが入っていて、それに触れると自然と笑みがこぼれてしまう。


警察署を出る際に、笠原さんが良かったら使ってほしいと言って防犯ブザーをくれた。


あの日記を見て買いに行ってくれたんだなと思うと嬉しかった。


ストーカーに会っていた時にもう朝陽と付き合っていたなら、どうして朝陽はストーカーに目を付けられなかったんだろう。


――――朝陽が、ストーカーだったから?


ダメだ――今は考えない様にしようと思っているのにどうしても考えてしまう。


朝陽はきっと違う。


少し心配性なだけで誰かを傷つける様な事はしないし、ましてや殺すなんて――そんな事出来る人じゃない。


私は何度も何度も深呼吸をして心を落ち着かせると、しっかりとした足取りでマンションのエントランスを通り過ぎた。






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