愛を餌に罪は育つ
『何かあったの?仕事で嫌な事でもあった?』



私は首を横に振りそのまま朝陽の胸に顔を埋めた。



「ごめッッ――、記憶がないからかな、たまにたまらなく不安になる――――」

『気付いてあげられなくてごめん。大丈夫だよ、不安に感じる事なんてない。僕がずっと傍にいるから』



私はなんて言葉を返せばいいのか分からなかった。


朝陽の洋服を握りしめると、肩の辺りにどんどんシワが寄っていく。


私の頭と腰から朝陽の手が離れたと思ったら、今度は私の頬を包み込み上を向かせた。


朝陽の熱を帯びた目――私はこの目を知ってる。


だけど何でだろう、切ない気持ちが胸に広がるようだった。


唇が触れ合い目を閉じた。


キスはどんどん激しさを増し角度を変える度に吐息が漏れる。


いけない事だと思いながらも線を引けない私はどうしようもない女だと思う。


自分がどんな人間なのか知っていく度、私は私に幻滅する。


朝陽に甘え慰めてくれている彼の唇を感じている中、頭に浮かんだのは副社長の顔だった――――。






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