愛を餌に罪は育つ

違和感

休日の昼頃、梓はカフェで一人コーヒーを飲んでいた。


落ち着かない様子で何度も辺りを見渡し、携帯や時計を何度も確認している。



「ごめん、遅くなって」



そう声を掛け梓の目の前に腰掛けたのは笠原 紅だった。



「ううん、私が早く来ちゃっただけだから。こっちこそ忙しいのに変な事頼んでごめんね」

「理由、説明してもらうからね」



紅の言葉に黙りこむ梓。


二人がいるテーブルの静けさを誤魔化すかの様に周りは酷く騒がしかった。


紅は店員を呼び止め梓と同じコーヒーを注文する。


いつもはきっちりとしたパンツスーツを着こなしている紅だが、今日は違った。


胸元にリボンの付いた白のブラウスにタイトな黒のスカート、そして少しヒールの高い黒のパンプス。


髪の毛も下ろし少し巻いている。


仕事の時の紅の姿からは想像もつかないような姿だ。


だが幼い頃からの友達である梓にとっては、プライベートの時の紅の姿の方が慣れ親しんだ姿なのかもしれない。


梓と紅は秋田で生まれ育ち、上京した時期は違うが今でもお互い時間が合えばこうして会っている。


だけど今日はいつもとは少し事情が違う。






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